2012年9月1日土曜日

派遣弁護士


日本では、弁護士を派遣することは許されていないが、アメリカでは弁護士派遣も許されている。特に、アメリカ特有のディスカバリーという制度は、一時的に大量のドキュメントをレビューする弁護士が必要になる。すると派遣会社に23ヶ月のプロジェクトでドキュメントをレビューする弁護士が必要なので派遣して欲しいと依頼する。派遣弁護士が受け取れる金額は1時間約50ドル程度である。小遣い稼ぎとしては結構な額になる。

ただ、落とし穴がある。ドキュメントレビューの仕事は弁護士としての経験になるようなものではない。特に派遣弁護士がやっているレビューは全く経験にならない。派遣弁護士の履歴書はとんでもないことになる。2から3ヶ月で色々な事務所を転々としている様子が、ずらーっと履歴書に並ぶ。こうなったら、通常の弁護士として法律事務所に就職することは難しい。インハウス弁護士として雇われることも難しい。なぜなら、企業は通常の大手法律事務所の経験が一定程度ある弁護士を雇いたいと考えているからである。

派遣弁護士はいつ仕事が来なくなってしまうか分からない。事務所加入の健康保険すらないので、自分で健康保険に加入しなければ医者にもかかれない。プロジェクトがあるときは結構お金が入るが、プロジェクトがない時は生活も安定しない。しかし、一旦派遣弁護士になると派遣弁護士から抜け出すことは困難である。

日本の弁護士や弁理士の資格の無い日本人でLL.M.だけを取得してアメリカ弁護士資格を取得してアメリカに残っている人の中には、派遣弁護士をやっている人も多い。日本企業が訴訟に巻き込まれたとき、日本語のドキュメントをレビューできる人が必要なので、彼らの需要はコンスタントにあるようだ。最近は日本の弁護士資格を持っていても、ロースクール後の研修先が見つからなくて1年間派遣弁護士として働いた後、日本に帰る人もいる。

そのうち日本でも「アメリカのように弁護士の派遣を認めればいいじゃないか」と言い出す人がいるかもしれない。

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